最近やたら耳にする教育資金の贈与って誰のためにあるの?

最近やたら耳にする「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」ですが、これって一体誰のためにあるのでしょうか?

 

「そんなのお金持ちのおじいちゃんやおばあちゃんのためにあるに決まっているじゃないの!だって贈与税高いんだから。更には賃金下がって生活に窮々としてる子供たちも助かるし・・・。という声が聞こえてきそうです(笑)。

 

税理士やFPの人には自明のことですが、

では贈与税って元々扶養義務者(注1)相互間の教育費って非課税財産じゃなかったでしょうか?(相法21-3-2)。

つまり通常必要と認められるという縛りはありますが、元々非課税なのでいまさら大きな声で言って周るほどのことでもないわけです。

 

ちなみに法律家の方は”民法の特別法として贈与税では別段の定義があるのでは”とのご心配も聞こえて来そうなのであえて付言しますと、民法上の扶養義務者より相続税法(贈与税)の扶養義務者のほうがむしろ範囲が広いので、その点も問題ありません。

 

以上のことを勘案すると、”じゃあなぜ今?”という気がしてきませんか?

 

そこで私なりの解釈をすると、今回の特例の要件の一つに贈与手段として「金銭等を金融機関(信託銀行、銀行等)に信託等する。」というのがあります。もちろん"通常必要とする範囲”を盾に税務当局から否認される可能性もあるので、疎明という観点からしても何らかの金融機関を絡ませるスキームが無難だと思いますし、今回の特例で非課税限度額が明示されていますのでこの辺りがある種の先例的なラインになるのかなと思いますので、そういう意味では広く啓蒙してもらった方が我々スキームを構築する側からは良いことだとは思います。

 

ただ非常に好意的な解釈をした場合はそうですが、この特例は今のところH27年度末までの縛りが付いていますので、それを過ぎても今と同じ状態だとは思えません。金融機関を敵に回すわけではないですが、NISA同様に消費者目線でないへんなエゴが見え隠れします(笑)。

 

なお法律家としての目線からは、代襲相続と特別受益の関係や特別受益と遺留分の問題を絡ませるとなかなか楽しいスキームを構築することもできそうなのですが、きりがないのでこの辺りで止めときます(笑)。

 

ちなみに昨今は海外留学者も増えてきています。特にお金持ちの祖父・祖母を持つような方には、そのような方が結構いるのではないでしょうか?

 

今度は手続き的な問題になりますが、当該特例では受贈者が国内に住所を有している場合には当然その住所地が納税地となりますが、国内に住所を有しない場合には申告書の提出先となる納税地を定める必要が生じます。同特例を適用する受贈者が、海外に長期留学することになって国内に住所を有しない場合には、税務署に納税管理人届出書を提出し、納税管理人及び納税地を定めることになるようです。

 

 

 

 

(注1)

1の2-1  相続税法(昭和25年法律第73号。以下「法」という。)第1条の2第1号に規定する「扶養義務者」とは、配偶者並びに民法(明治29年法律第89号)第877条((扶養義務者))の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族をいうのであるが、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。
  なお、上記扶養義務者に該当するかどうかの判定は、相続税にあっては相続開始の時、贈与税にあっては贈与の時の状況によることに留意する。(平15課資2-1追加、平17課資2-4改正)